まず安全を確保:日本の残留限度値と表示名
2024年12月施行の制度でΔ9-THCの残留限度値が形状別に明確化。化粧品でもCOAで総THCと安全性項目を確認するのが実務的です。 厚生労働省+1
2025年の日本では、CBDを含む製品のΔ9-THC残留限度値が「油脂(常温で液体)/粉末=10ppm」「水溶液=0.10ppm」「その他=1ppm」と示され、限度超過は由来にかかわらず「麻薬」該当と整理されています。美容カテゴリーのバーム・クリーム・ジェル・ミスト等も形状に応じて判断されるため、購入時はロットごとのCOAで総THCと重金属・微生物・農薬などの安全性項目を確認しましょう。最近は自治体の買上調査を契機に注意喚起が出る事例もあり、適合性の確認はユーザー側のリスク低減にも役立ちます。 厚生労働省+1
形状別Δ9-THC残留限度値と“ゼロ表記”の読み替え
「THCゼロ」は多くの場合“検出限界未満”の表現。法令適合は“形状別限度値内か”で判断します。
- 早見表(日本のΔ9-THC残留限度値)
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油脂(常温で液体)・粉末 水溶液 その他 10 ppm 0.10 ppm 1 ppm
- 実務メモ
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- COAの単位(ppm/%/mg/kg)を換算して突合
- ラベルのロット番号=COAのロット番号
- 「ゼロ」表記=法的適合と同義ではない点に注意。 厚生労働省+1
表示名称「カンナビジオール」とGMP/試験所認定
日本の化粧品表示名称は「カンナビジオール」。製造面ではISO 22716(化粧品GMP)、試験面ではISO/IEC 17025(試験所能力)が信頼性の目安です。
INCI「Cannabidiol」、日本の表示名称「カンナビジオール」は成分データベースに整理されています。品質文脈では、工場の運用基準としてISO 22716(化粧品GMP)、試験ラボの能力としてISO/IEC 17025認定が参照されます。北米等でも大麻関連の試験は17025が前提とされるケースがあります。ブランドの説明やCOA欄で、これらへの準拠が示されているかを確認すると安心材料になります。 Cosmetic Info+2ISO+2
皮脂・毛穴・赤みの基礎科学:何が期待「されている」か
基礎研究では皮脂腺細胞での抗炎症・脂質調整が報告。臨床ではにきび・赤みに関する小規模試験が増え、示唆が蓄積中とされています。
CBDは脂溶性で、ヒト皮脂腺細胞において炎症性サイトカインや脂質合成の調整が報告されています。外用の臨床はまだ小規模ですが、にきび病変数や赤みの指標で有望な結果が出た研究もあります。一方で試験規模や処方全体の影響など限界もあり、「効く」と断定せず“示唆”の段階として理解するのが適切です。 jci.org+2リサーチエクスプローラー+2
皮脂腺細胞での作用とTRP/炎症マーカー
TRPV4活性化を介した脂質産生の抑制や抗炎症が報告され、にきびの病態学的要因に働く可能性が示されています。
JCIの研究は、培養ヒト皮脂腺細胞でアラキドン酸などによる脂質促進をCBDが抑制し、炎症性マーカーも低下させたと報告しました(TRPV4経路関与)。この基礎的メカニズムは“皮脂・赤み・毛穴目立ち”への応用可能性を示しますが、実際の外用製品では濃度・基剤・皮膚透過性により結果が左右されます。 jci.org+1
臨床エビデンスの現在地(にきび・赤み)
0.13% CBDクリームを用いたランダム化比較で、クリンダマイシン+BPOと同等の傾向が報告。UV関連の赤みに対する保護的所見を示した小規模試験もあります。
JAAD掲載のスプリットフェイスRCTでは、0.13% CBDクリーム(BPO併用)とクリンダマイシン(BPO併用)で有効性・安全性が近い傾向が示されました。別の小規模RCTでは、ナノカプセルCBDがUVA誘発の紅斑やDNA損傷指標の低減に寄与したと報告されています。ただし規模は小さく、処方全体の影響も含まれるため一般化には慎重さが求められます。 PubMed+3JAAD+3JAAD+3
テクスチャとスペクトラム:刺激感・法令とのバランス
日常使いでは“低刺激×法令適合×続けやすさ”が基本。肌質と生活に合わせてテクスチャとスペクトラムを選びます。
同じCBDでも、基剤(オイル/バーム/クリーム/ジェル)やスペクトラム(アイソレート/ブロード/フル)で使用感と法令上の扱いが変わります。油脂ベースは密封感が出やすく、ジェルは軽い反面、水相比率が高いほどTHC残留限度値(0.10ppm)適合のハードルが上がる点に注意。スペクトラムはTHC検出下限やテルペン有無などで選好が分かれます。 厚生労働省
オイル/バーム/クリーム/ジェルの選び分け
敏感肌はジェル→乳液/クリーム→バーム→高含油の順で刺激管理がしやすい傾向。Tゾーンは軽め、頬は保湿優先が無難。
- テクスチャ別・相性と注意点(法令区分の目安つき)
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テクスチャ 相性の肌 メリット 注意点 形状区分の目安 ジェル/ローション(水系) 脂性〜混合、赤み 軽い/速乾でメイク前も◎ エタノールや酸の有無に注意 水溶液(0.10ppm) 乳液/クリーム 乾燥〜混合、敏感 保湿と密着のバランス 香料強めは刺激になり得る その他(1ppm) バーム 乾燥・摩擦ケア 皮膜で保護・密封 皮脂詰まりやすい人は薄塗り その他(1ppm) 美容オイル 乾燥・スポット 伸び/なじみ◎ 酸化安定性と香りの相性 油脂(10ppm) ※区分は一般的な目安。製品実測のCOAで適合を確認してください。 厚生労働省
アイソレート/ブロード/フルの外用リスク・便益
THC非検出を志向するならアイソレートや厳格ブロード。香りや相乗を期待するならブロード/フル。ただし限度値内か要確認。
- アイソレート:CBD純度重視。匂い/色が穏やかで敏感肌の初期導入に向く声。
- ブロード:テルペン等の併存成分を活用。総THCは検出下限未満を志向。
- フル:微量THCを含む場合が多く、形状別限度値内か厳格に確認。
- 選択時は総THC・残留溶媒・微生物等の試験が第三者機関で行われているかをCOAでチェック。 厚生労働省キャリア支援センター
COAの超実務:美容ユーザー向け3分チェック
「法令適合+清潔さ」を3項目で確認。①総THCの適合 ②重金属/微生物/農薬 ③ロット一致。
COAは品質の“成績表”。国内通関や注意喚起の事例からも、データで確認する姿勢が安全管理の近道です。通販サイトのサムネだけで選ばず、ロットCOAのリンクやPDFを確認してから購入する習慣を。 厚生労働省
総THC・安全性項目・ロット一致の確認
ppm換算の取り違えとロット不一致がトラブルの温床。
- 3分チェック
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- 総THC:形状別限度値(10ppm/0.10ppm/1ppm)内か
- 安全性:重金属・微生物・農薬・残留溶媒の項目有無
- ロット一致:ラベルのLOTとCOAのLOTが一致
参考:税関/麻薬取締部の案内や事前確認制度も周知が進んでいます。 厚生労働省+2税関ポータル+2
ISO/IEC 17025とISO 22716の意味
17025は試験の信頼性、22716は製造の運用基準。どちらも“品質への姿勢”を測る手がかりになります。
ISO 22716は化粧品GMPの国際ガイドライン、ISO/IEC 17025は試験所の能力規格で、北米の公的機関もカンナビノイド試験に17025を求めています。COAやブランドサイトにこれらへの準拠が示されているか、確認してみましょう。 ISO+1
使い方の設計:初週〜4週プロトコルと併用マップ
敏感肌ほど“パッチテスト→少量→頻度拡張”。刺激を感じたら中止し、保湿優先でリカバリーします。
外用CBDは比較的忍容性が高いとされる報告がある一方、発疹などの有害事象が報告されたケースシリーズもあります。個人差を前提に、導入初期は小面積・低頻度で肌の反応を見ながら進めるのが安全です。 cot.food.gov.uk+1
“米粒量”から始める導入ステップ
1〜2週間で面積・頻度を段階的に。
- 1週目:夜のみ“米粒量”を頬外側でパッチ→薄く全体 or Tゾーン部分使い
- 2週目:反応がなければ朝は保湿のみ、夜は小豆量に増量可
- 3週目:Tゾーン/赤み部にスポット追加。テカりが出る日は量を戻す
- 4週目:日中も薄く(メイク前はジェル/乳液系が無難)。紫外線対策は別で徹底
- 異常(かゆみ/ヒリつき/湿疹)が出たら中止し、鎮静・保湿に切替え、必要に応じ受診を。 PMC
併用しやすい成分/注意したい成分
保湿系は相性良好。角質ケア酸やレチノールは刺激が重なる可能性。
- 併用しやすい:セラミド、スクワラン、ヒアルロン酸、パンテノール、ナイアシンアミド(低濃度)
- 注意:AHA/BHA/レチノール/高濃度ビタミンC/エタノール高配合
- 赤みケアの補助:UVA対策(広域SPF)と冷却・圧摩擦低減が土台。UVA誘発赤みに対するCBDの予防的所見を示した小規模試験もありますが、まずはサンスクリーンが基本です。 PubMed
ケース別ナビ:テカり/Tゾーン赤み/マスク荒れ
症状と生活で“部位×時間帯×テクスチャ”を切り替えると過不足なく使えます。
- テカり優勢(混合肌)
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- 朝:ジェル系をTゾーン薄塗り、頬は保湿のみ
- 夜:クリーム少量→必要部位にCBDジェル重ね
- Tゾーンの赤み
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- 擦り/剃毛/マスク摩擦の低減+冷却
- 夜:アイソレート配合の低刺激処方から。週1〜2回で様子見
- マスク荒れ(摩擦乾燥)
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- 白色ワセリン等で保護→バーム少量の“点置き”
- 通気・洗浄・保湿が優先。CBDは補助的にスポット使用
よくある誤解と対策チェックリスト
表現や“期待”の行き過ぎを抑え、COAと導入計画で失敗を減らします。
- 誤解:「THCゼロ表記=法令適合」
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対策:形状別限度値×COAで判断(10/0.10/1ppm)。 厚生労働省
- 誤解:「基礎研究=市販コスメで同等に実感」
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対策:臨床規模や処方影響を理解し、少量・小面積から。 PMC+1
- 誤解:「外用は副作用ゼロ」
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対策:発疹や刺激の報告あり。異常時は中止し受診を。 PMC+1
- 購入前チェック
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- ☐ 目的を1つに絞る(テカり/赤み/乾燥)
- ☐ テクスチャを選ぶ(ジェル/クリーム/バーム/オイル)
- ☐ COAで総THC・安全性項目・ロット一致を確認
- ☐ ISO 22716や第三者試験(17025)への言及を確認
- ☐ 初週のパッチテスト計画を立てる
まとめ:根拠と実務を両輪に“安心×実感”へ
法令適合とCOA確認を“前提”に、低刺激処方を少量から。赤み・毛穴・皮脂の悩みは、生活要因の調整も同時に。
CBD外用は、皮脂・炎症・赤みに関する基礎・臨床の示唆が積み上がりつつあります。2025年の日本では残留限度値が明確化され、ユーザー自身がCOAで適合性を確認できる環境が整ってきました。いきなり高頻度・広範囲ではなく、少量から丁寧に。サンスクリーンや保湿・摩擦対策と併用することで、現実的で続けやすいケア設計につながります。 厚生労働省+2JAAD+2
- 根拠・参照元
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厚生労働省:改正法とΔ9-THC残留限度値の案内(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html)
麻薬取締部(NCD):CBD関連製品と残留限度値・非該当性確認(https://www.ncd.mhlw.go.jp/cbd.html)
厚生労働省:残留限度値超過製品への注意喚起(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212707_00028.html)
Cosmetic-Info:化粧品表示名称「カンナビジオール」(https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=14146)
ISO:ISO 22716(化粧品GMP)(https://www.iso.org/standard/36437.html)
California DCC:試験ラボはISO/IEC 17025要件(https://cannabis.ca.gov/licensees/testing-laboratories/)
J Clin Invest 2014(Oláh):皮脂腺細胞での抗炎症・脂質抑制(https://www.jci.org/articles/view/64628)
JAAD 2024:0.13% CBDクリームのスプリットフェイスRCT(https://www.jaad.org/article/S0190-9622%2824%2901695-5/fulltext)
PubMed:Topical nCBDによるUVA保護のRCT抄録(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39025264/)
FDA Consumer Update:CBD製品の安全性に関する未解決点(https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/what-you-need-know-and-what-were-working-find-out-about-products-containing-cannabis-or-cannabis)
COT(英国毒性委員会):外用CBDの安全性レビュー(https://cot.food.gov.uk/sites/default/files/2020-08/tox202023topicalcbdforwebsite_accessibleinadobepro_0.pdf)
Frontiers in Pharmacology 2022:CBD誘発皮疹の症例報告(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9161546/)
Biomedicines 2025:皮膚健康におけるCBDの総説(https://www.mdpi.com/2218-273X/15/9/1219)